手続き2025.02.22最終更新: 2025.02.22

相続が発生したとき、遺産にプラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も含まれている場合、どのように対応すべきか悩む方は少なくありません。相続の方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つがあり、特に「限定承認」は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという中間的な選択肢として注目されています。

この記事では、限定承認の仕組みや相続放棄との違い、手続きの流れについて詳しく解説します。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ、被相続人の債務(借金や未払い金など)を引き継ぐ相続の方法です。つまり、相続財産がプラスであればその利益を受け取り、マイナスの方が大きければプラスの財産を超える部分については責任を負わないという仕組みです。

限定承認が有効なケース

限定承認は、次のような状況で特に有効です。

  • 遺産の中にプラスとマイナスの財産が混在しており、どちらが多いか不明な場合
  • 自宅など手放したくない財産があるが、借金もある場合
  • 被相続人が連帯保証人になっており、将来的に請求が来る可能性がある場合
  • 事業用資産を引き継ぎたいが、事業の債務状況が不透明な場合

限定承認と相続放棄の違い

限定承認と相続放棄は、どちらも「すべての借金を引き受けたくない」ときに検討される選択肢ですが、その内容は大きく異なります。

財産の取り扱いの違い

相続放棄では、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄します。一切の相続権がなくなるため、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。一方、限定承認では、プラスの財産は受け取りつつ、マイナスの財産はプラスの範囲内でのみ責任を負います。

手続きの違い

相続放棄は各相続人が個別に行うことができますが、限定承認は相続人全員が共同で行わなければなりません。これが限定承認の利用率が低い大きな理由のひとつです。相続放棄について詳しくは「相続放棄の手続き方法|期限は3ヶ月以内」をご覧ください。

申述先と期限

どちらも家庭裁判所に申述する必要があり、期限は相続の開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)です。この期限を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされます。

限定承認のメリット

限定承認には、以下のようなメリットがあります。

借金のリスクを限定できる

最大のメリットは、プラスの財産を超える借金を負わなくて済む点です。相続財産を清算した結果、プラスが残ればそれを受け取り、マイナスが残った場合でも自分の財産から弁済する必要はありません。

特定の財産を残せる可能性がある

限定承認の手続きの中で「先買権」を行使することにより、自宅不動産などの特定の財産を、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額で買い取ることができます。これにより、大切な財産を手元に残せる可能性があります。

後から借金が判明しても安心

限定承認をしておけば、手続き後に新たな借金が判明した場合でも、すでに受け取ったプラスの財産の範囲内で対応すればよく、自分の財産が脅かされることはありません。

限定承認のデメリット

一方で、限定承認にはいくつかのデメリットもあります。

相続人全員の合意が必要

限定承認は、相続人全員が共同で申述しなければなりません。一人でも反対する相続人がいると限定承認はできません。ただし、一部の相続人がすでに相続放棄をしている場合は、残りの相続人全員で限定承認を行うことが可能です。

手続きが複雑で時間がかかる

限定承認の手続きでは、家庭裁判所への申述のほか、債権者への公告、財産の清算手続きなどが必要になります。これらの手続きは専門的な知識を要し、完了までに数ヶ月から1年以上かかることもあります。

みなし譲渡所得税が発生する場合がある

限定承認をした場合、被相続人から相続人へ時価で資産を譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が課される場合があります。特に値上がりした不動産や株式を相続する場合は、この点に注意が必要です。

費用が高くなりがち

弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合の費用は、相続放棄よりも高額になるのが一般的です。手続きの複雑さに応じて、30万円〜100万円程度かかることがあります。

限定承認の手続きの流れ

限定承認の手続きは、以下のステップで進めます。

1. 相続財産の調査

まず、被相続人のすべての財産と債務を洗い出します。預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産と、借金、未払い金、保証債務などのマイナスの財産を把握します。

2. 相続人全員の合意形成

限定承認は相続人全員で行う必要があるため、全員の意思確認と合意を得ます。相続放棄を希望する人がいれば、先に相続放棄の手続きを行い、残りの相続人で限定承認を進めます。相続人の調査方法は「相続人調査の方法」で解説しています。

3. 家庭裁判所への申述

相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に限定承認の申述を行います。必要書類は、申述書、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、財産目録などです。

4. 相続財産管理人の選任

家庭裁判所は、相続人の中から相続財産管理人を選任します(相続人が1人の場合はその相続人)。管理人は財産の管理・清算を担当します。

5. 債権者への公告・催告

限定承認が受理されたら、5日以内に債権者に対して公告を行い、知れている債権者には個別に催告します。公告期間は2ヶ月以上です。

6. 財産の清算・配当

公告期間の経過後、届出のあった債権者に対して弁済を行います。優先順位に従って配当し、残余財産があれば相続人が取得します。

限定承認を選ぶべきか迷ったら

限定承認は有用な制度ですが、手続きの複雑さや費用の面から、実際に利用されるケースは多くありません。相続放棄との違いを正しく理解した上で、ご自身の状況に合った選択をすることが重要です。

どの方法を選ぶべきか判断に迷う場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。相談先の選び方については「相続の相談はどこにすればいい?専門家の選び方」もあわせてご覧ください。手続き全体の流れについては「相続手続きの全体の流れ」で確認できます。

まとめ

限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ制度であり、遺産の内容が不明確な場合やリスクを限定したい場合に有効です。ただし、相続人全員の合意が必要で手続きも複雑なため、専門家のサポートを受けることが大切です。

当センターでは、限定承認を含む相続手続き全般のご相談を承っております。お気軽に無料相談をご利用ください。

免責事項 本記事は2025年3月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。
この記事の監修
株式会社 相続サポートセンター
税理士法人みらいを中心とした「みらいグループ」の一員。東京都西東京市に拠点を置き、相続手続き・遺言書作成支援・遺産整理業務を専門に、年間多数のご相談に対応しています。税理士・行政書士・社労士が連携し、税務・法務・労務をワンストップでサポートします。
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