ご家族が亡くなった後、さまざまな相続手続きを進める中で忘れてはならないのが「準確定申告」です。通常の確定申告は本人が行いますが、年の途中で亡くなった場合は、相続人が代わりに申告を行う必要があります。しかも、通常の確定申告とは異なる期限が設けられているため、注意が必要です。本記事では、準確定申告の基礎知識から具体的な手続きの流れまで、分かりやすく解説します。
準確定申告とは
準確定申告とは、年の途中で亡くなった方(被相続人)の、その年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告を行う手続きです。所得税法第124条および第125条に基づく義務であり、一定の要件に該当する場合には必ず行わなければなりません。
通常の確定申告が翌年の2月16日から3月15日までに行うのに対し、準確定申告は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」に行う必要があります。この期限は通常の確定申告より短いため、速やかな対応が求められます。
準確定申告が必要なケース
すべての相続で準確定申告が必要なわけではありません。以下のケースに該当する場合に、準確定申告を行う義務があります。
事業所得や不動産所得がある場合
被相続人が個人事業主であった場合や、アパート経営などで不動産所得があった場合は、準確定申告が必要です。事業所得の計算は、1月1日から死亡日までの期間で行います。仕掛品や在庫の棚卸しなど、通常の確定申告と同様の処理が求められます。
給与所得が2,000万円を超える場合
被相続人が会社員であっても、給与所得が2,000万円を超える場合は準確定申告が必要です。通常は年末調整で精算されますが、年の途中で亡くなった場合は年末調整が行われないため、確定申告で精算する必要があります。
2か所以上から給与を受けていた場合
複数の勤務先から給与を受けていた場合も、準確定申告が必要になることがあります。主たる給与以外の給与収入と各種所得の合計が20万円を超える場合が該当します。
公的年金等の収入が400万円を超える場合
年金受給者であっても、公的年金等の収入金額が400万円を超える場合は準確定申告が必要です。また、年金以外の所得が20万円を超える場合も申告が必要となります。
還付を受けられるケース
準確定申告は義務でなくても、医療費控除や源泉徴収税額の精算によって税金が還付される場合は、申告を行うことで還付金を受け取ることができます。特に、高額な医療費を支払っていた場合は、還付申告を検討する価値があります。
準確定申告の期限
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。たとえば、被相続人が7月15日に亡くなり、その日に相続の開始を知った場合、申告期限は11月15日となります。
期限に遅れた場合のペナルティ
期限内に申告を行わなかった場合は、無申告加算税(原則として納付すべき税額の15%から20%)が課されます。さらに、納付が遅れた期間に応じて延滞税も発生します。期限内に正しく申告・納付することが重要です。
準確定申告の必要書類
準確定申告を行う際に必要となる主な書類は以下のとおりです。
- 確定申告書(準確定申告用の付表を添付)
- 被相続人の源泉徴収票
- 被相続人の各種控除に関する証明書(生命保険料控除証明書、医療費の領収書など)
- 相続人全員の本人確認書類
- 死亡届の記載事項証明書または戸籍謄本
- 委任状(相続人の代表者が申告する場合)
準確定申告書の付表には、各相続人の氏名・住所・相続分などを記載します。この付表は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
申告方法と連名での申告
準確定申告は、原則として相続人全員が連名で行います。相続人が複数いる場合は、各相続人が連署した確定申告書を提出するか、代表者を定めて申告を行います。
代表者が申告する場合
相続人の中から代表者を1人選び、その代表者が申告書を作成・提出する方法が一般的です。この場合、他の相続人に対して申告内容を通知する義務があります。通知は書面で行い、申告した内容の写しを交付するのが望ましいでしょう。
各相続人が個別に申告する場合
相続人間で意見が一致しない場合など、各相続人がそれぞれ個別に準確定申告を行うことも認められています。ただし、この場合も他の相続人に対して申告内容を通知する必要があります。
医療費控除の取り扱い
準確定申告において、医療費控除は重要なポイントの一つです。被相続人が死亡日までに支払った医療費は、準確定申告で医療費控除の対象となります。
死亡後に支払った医療費
注意が必要なのは、被相続人の死亡後に相続人が支払った医療費の取り扱いです。被相続人の生前に発生した医療費であっても、死亡後に相続人が支払った分は、被相続人の準確定申告では医療費控除の対象となりません。ただし、その相続人自身の確定申告において、一定の要件を満たせば医療費控除を受けられる場合があります。
高額療養費・保険金の取り扱い
高額療養費の還付金や生命保険の入院給付金を受け取った場合は、その金額を医療費から差し引く必要があります。被相続人の死亡後に受け取った場合でも、被相続人の医療費に対応するものであれば差し引きの対象となります。
準確定申告の手続きの流れ
準確定申告の手続きは、以下の流れで進めます。
まず、被相続人の収入に関する資料を収集します。勤務先からの源泉徴収票、不動産収入の記録、年金の支払通知書などを確認します。次に、控除に関する証明書を集めます。生命保険料控除証明書、医療費の領収書などが該当します。
続いて、申告書の作成に取りかかります。通常の確定申告書の様式を使用し、付表を添付します。e-Taxを利用することも可能ですが、準確定申告の場合はe-Taxでの提出に一定の制限がある場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
最後に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告書を提出し、納付すべき税額がある場合は納付を行います。還付がある場合は、相続人の代表者の口座に振り込まれます。
準確定申告は、相続手続き全体の流れの中でも比較的早い段階で対応が必要です。期限が4ヶ月と短いため、専門家への相談を早めに行うことをおすすめします。また、相続税の基礎知識とあわせて理解しておくと、相続全体の手続きがスムーズに進みます。