相続税2026年6月24日最終更新: 2026.07.10

この記事の要点

  • みなし相続財産は相続税法第3条に列挙された、民法上は相続財産ではないが相続税の課税対象とされる財産
  • 主な対象:①生命保険金(第1号)、②死亡退職金(第2号)、③生命保険契約に関する権利(第3号)、④定期金に関する権利(第4号)、⑤保証期間付定期金に関する権利(第5号)、⑥契約に基づかない定期金に関する権利(第6号)
  • 生命保険金と死亡退職金は、それぞれ「500万円×法定相続人数」の非課税枠あり(相続税法第12条1項5号・6号)
  • みなし相続財産は遺産分割の対象外(受取人固有の財産)。受取人指定により相続放棄しても受け取れるが、相続放棄者には非課税枠は適用されない

相続税の計算では「みなし相続財産」という考え方が重要になります。生命保険金や死亡退職金は、民法上は相続財産ではないにもかかわらず、相続税の課税対象となるためです。この特殊な取扱いを理解しておかないと、相続税の申告漏れや、節税機会の見逃しにつながります。

この記事では、相続税法第3条に列挙された6種類のみなし相続財産について、非課税枠や遺産分割協議との関係、相続放棄との関係を含め、法的根拠を示しながら詳しく解説します。

みなし相続財産とは(相続税法第3条)

みなし相続財産とは、相続税法第3条1項により、民法上は相続または遺贈によって取得した財産ではないが、被相続人の死亡を原因として相続人等が取得する財産で、実質的に相続財産と同視できるため、相続税の課税対象とされる財産をいいます。

相続税法第3条1項は1号から6号まで類型を列挙しており、これらに該当する財産は「相続または遺贈により取得したものとみなす」とされ、相続税の課税価格に算入されます。

民法と相続税法の違い

民法上の相続財産は、被相続人が死亡時点で所有していた財産(預貯金、不動産、株式、借金など)です。一方、相続税法上の課税対象は、民法上の相続財産に加えてみなし相続財産も含みます。

例えば、生命保険金の受取人が相続人に指定されている場合、保険金は受取人固有の財産であり、民法上の相続財産ではありません。しかし相続税法上は課税対象となり、相続税申告に含める必要があります。

みなし相続財産と本来の相続財産の違い(比較表)

「みなし相続財産」と「本来の相続財産(民法上の相続財産)」は、相続税の課税対象になるという点では同じですが、それ以外の取扱いは大きく異なります。両者の違いを4つの観点で整理すると、次のとおりです。

観点 本来の相続財産 みなし相続財産
① 遺産分割の対象か 対象になる(相続人全員の協議が必要) 対象外(受取人が単独で受け取れる)
② 相続放棄しても受け取れるか 受け取れない(一切承継しない) 受け取れる(受取人固有の財産のため)
③ 非課税枠の有無 なし(預貯金・不動産等に非課税枠はない) 生命保険金・死亡退職金は500万円×法定相続人の数(各別枠)
④ 民法と相続税法の扱い 民法:相続財産/相続税法:課税対象 民法:相続財産ではない/相続税法:課税対象(第3条でみなす)

この表からわかるとおり、みなし相続財産は「民法上は相続財産ではないのに、相続税法上は課税される」というねじれた性質を持っています。このねじれこそが、実務上のトラブルと申告漏れの主な原因です。

遺留分侵害額請求との関係

生命保険金は受取人固有の財産であるため、原則として遺留分算定の基礎となる財産には含まれません。ただし、後述の最高裁平成16年10月29日決定のとおり、保険金額が遺産総額に比して著しく高額であるなど特段の事情がある場合には、特別受益に準じて持戻しの対象となり得ます。相続人間の公平を著しく害するほど多額の保険金を一人に集中させる設計には、注意が必要です。

みなし相続財産の6類型(相続税法第3条1項)

第1号:生命保険金

被相続人の死亡により相続人等が受け取る生命保険金(被相続人が保険料の全部または一部を負担していたもの)が対象です。被相続人が契約者かつ被保険者で、受取人が相続人の場合が典型的なケースです。

第2号:死亡退職金

被相続人の死亡により相続人等に支給される退職手当金・功労金・その他これらに準ずる給与で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものが対象です。3年経過後に支給確定したものは、受取人の一時所得として扱われます。

第3号:生命保険契約に関する権利

被相続人が保険料を負担し、被相続人以外の者が契約者となっている生命保険契約で、相続開始時点で保険事故が未発生のもの(解約返戻金相当額等)が対象です。例えば、父が保険料を払い、契約者・被保険者が子の保険契約で、父が亡くなった場合などが該当します。

第4号:定期金に関する権利

被相続人が掛金等を負担し、相続開始時点で給付事由が未発生の定期金(個人年金等)に関する権利が対象です。

第5号:保証期間付定期金に関する権利

被相続人が掛金等を負担した、保証期間付の定期金(保証期間中に被保険者が死亡した場合に遺族に給付されるもの)に関する権利です。

第6号:契約に基づかない定期金に関する権利

被相続人の死亡により相続人等に支給される、契約に基づかない定期金(恩給法に基づく扶助料など)に関する権利です。

生命保険金と死亡退職金の非課税枠

相続税法第12条1項5号・6号は、生命保険金と死亡退職金について、それぞれ独立した非課税枠を定めています。

非課税枠の計算式

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

生命保険金と死亡退職金それぞれに、別個に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が認められています。法定相続人の数は、相続放棄があってもなかったものとして計算します(相続税法第15条2項)。

非課税枠の計算例

法定相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合、生命保険金の非課税枠は1,500万円、死亡退職金の非課税枠も1,500万円となります。例えば、生命保険金2,000万円を配偶者が受け取った場合、非課税枠1,500万円を控除した500万円のみが課税対象となります。

2人以上が受け取った場合の各人の非課税額は、各人が受け取った保険金額の比で按分します。

非課税枠が使えないケース

  • 相続放棄した者が受け取った保険金・退職金(相続税法第12条1項5号・6号のいずれもカッコ書きで「相続人」に限定)
  • 受取人が相続人以外の第三者の場合

これらの場合でも、保険金等自体は課税対象として申告に含める必要があります。

みなし相続財産は遺産分割の対象外

みなし相続財産は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象になりません。例えば、生命保険金は受取人として指定された人が単独で受け取り、他の相続人と分け合う必要はありません。

受取人指定の効力

生命保険契約で受取人を指定している場合、その指定が優先されます。遺言書に「保険金も含めて誰々に相続させる」と書いてあっても、保険契約上の受取人指定が優先されるのが原則です。

特別受益との関係

原則として生命保険金は特別受益に該当しませんが、最高裁平成16年10月29日決定は、保険金額が遺産総額に対して著しく高額である等の特段の事情がある場合は、民法第903条の類推適用により特別受益として持戻しの対象になり得るとしました。実務では、保険金が遺産全体に対して相当な割合を占める場合に争いになることがあります。

相続放棄との関係

みなし相続財産は受取人固有の財産であるため、相続放棄しても受け取ることができます。借金の相続を回避するために相続放棄したうえで、生命保険金だけを受け取るというケースは少なくありません。

相続放棄者の課税の特徴

  • 保険金・退職金は受け取れる(受取人固有の財産のため)
  • 相続税は課税される(みなし相続財産として)
  • 非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用されない(相続税法第12条1項5号・6号の「相続人」要件を満たさない)
  • 相続税の2割加算(相続税法第18条)の対象になる場合がある

みなし相続財産に関するよくある誤解

当センターへのご相談でも、みなし相続財産については同じような思い込みが繰り返し見られます。代表的な3つの誤解を、法的な根拠とともに正しておきます。

誤解①「保険金も相続財産だから、遺産分割協議で分ける必要がある」

正しくは:受取人が指定されていれば、遺産分割協議は不要です。

保険金請求権は、保険契約に基づいて受取人が原始的に取得する固有の財産であり、被相続人から承継する財産ではありません(最高裁昭和40年2月2日判決)。したがって、遺産分割協議書に記載する必要はなく、他の相続人の同意がなくても受取人が単独で保険会社に請求できます。

実務では、「長男が保険金を受け取ったのだから、その分は遺産の取り分から差し引くべきだ」という主張から争いになるケースがあります。原則としてこの主張は通りませんが、保険金額が遺産総額に比して著しく高額であるなど特段の事情がある場合には、民法第903条の類推適用により持戻しの対象となり得ます(最高裁平成16年10月29日決定)。

なお、受取人が「被保険者の相続人」とだけ指定されている場合、特段の事情がない限り、各相続人は法定相続分の割合で保険金を取得すると解されています(最高裁平成6年7月18日判決)。この場合も遺産分割の対象ではなく、分割割合の解釈の問題です。

誤解②「相続放棄をしたら、生命保険金も受け取れない」

正しくは:受取人に指定されていれば、相続放棄をしても保険金は受け取れます。

相続放棄は「被相続人の権利義務を承継しない」という手続きですが、保険金は被相続人から承継する財産ではないため、放棄の影響を受けません。借入金などマイナスの財産が多いケースで、相続放棄をしたうえで保険金だけを受け取るという選択は、実際によく用いられます。

ただし、税務上は次の3点で不利になります。

  • 非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されない(相続税法第12条1項5号・6号は「相続人」が取得した場合に限定)
  • 受け取った保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象になる
  • 被相続人の一親等の血族・配偶者以外に当たる場合は、相続税の2割加算(相続税法第18条)の対象となることがある

また、保険金の受領そのものは単純承認事由に当たらないと解されていますが、被相続人の預貯金の払戻しや遺産の処分をしてしまうと法定単純承認(民法第921条)と判断され、相続放棄ができなくなるおそれがあります。放棄を検討中は、遺産に手を付けないことが鉄則です。

誤解③「みなし相続財産は相続財産ではないから、相続税の申告に入れなくてよい」

正しくは:相続税法第3条により課税対象であり、申告に含める必要があります。

「民法上は相続財産ではない」という説明が、そのまま「相続税もかからない」という誤解につながっているケースが多く見られます。みなし相続財産は、非課税枠を超える部分が課税価格に算入されます。

さらに注意したいのが、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかの判定にも、みなし相続財産が含まれるという点です。「預貯金と自宅だけなら基礎控除以下だから申告不要」と考えていたところ、生命保険金を加えると基礎控除を超えており、申告義務があった――という事例は珍しくありません。保険金や死亡退職金がある場合は、必ず合算して判定してください。

相続税申告での注意点

申告漏れに注意

みなし相続財産は通帳に「相続財産」として現れないため、申告漏れになりやすい財産です。被相続人が契約していた保険会社・勤務先からの支給通知を必ず確認しましょう。

3年以内贈与財産との違い

相続開始前一定期間内(2024年1月以降は段階的に3年から7年へ延長中)の贈与財産は、相続税法第19条により相続税の課税価格に加算されますが、これは「みなし相続財産」ではなく「生前贈与加算」として区別されます。

当センターの実績

東久留米市での事例 東久留米市にお住まいだったお客様の相続税申告で、ご家族が把握されていなかった被相続人名義の生命保険契約(契約者・被保険者は被相続人、受取人は配偶者)が複数判明したケースをご支援しました。保険会社からの支払通知書を基に正確に非課税枠(500万円×法定相続人数)を計算し、適正な相続税申告書を作成いたしました。

まとめ

みなし相続財産は、相続税法第3条に基づき相続税の課税対象となる特殊な財産です。民法上の相続財産ではないため遺産分割の対象外ですが、相続税申告では必ず含めなければなりません。

生命保険金と死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、適切に活用すれば大きな節税につながります。一方で、申告漏れや受取人指定の不適切さで思わぬ税負担が生じることもあります。

当センターでは、財産調査から非課税枠の最大活用、相続税申告書の作成までワンストップでサポートいたします。無料相談をぜひご利用ください。相続税の基礎控除当センターのサービス内容もあわせてご確認ください。

生命保険金や死亡退職金など、みなし相続財産の相続税でお困りではありませんか?

みなし相続財産は非課税枠の計算や申告に専門知識が必要です。相続税に強い税理士法人みらいと連携して対応します。

西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。

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※免責事項:本記事は2026年7月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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