遺言書は、自分の死後に財産をどのように分けるかを記した法的な文書です。遺言書を適切に作成しておくことで、相続人同士の争いを防ぎ、ご自身の意思を確実に反映させることができます。
しかし、遺言書には法律で定められた方式があり、要件を満たさないと無効になってしまう場合があります。この記事では、遺言書の3つの種類とそれぞれの特徴、自分に合った遺言書の選び方を詳しく解説します。
遺言書はなぜ必要なのか
遺言書がない場合、遺産は法定相続分に基づいて分割されるか、相続人全員による遺産分割協議で分け方を決めることになります。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、意見が対立すると手続きが長期化するおそれがあります。
遺言書を作成しておくことで、以下のようなメリットがあります。
- 自分の意思に基づいた財産の分配ができる
- 相続人同士のトラブルを未然に防げる
- 法定相続人以外の方への遺贈が可能になる
- 相続手続きをスムーズに進められる
- 事業承継の準備ができる
遺言書の3つの種類
民法で定められた普通方式の遺言書は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人がすべて手書きで作成する遺言書です。最も手軽に作成できる方法として広く利用されています。
作成の要件
- 遺言書の全文を遺言者が自筆で書くこと(2019年の法改正により、財産目録はパソコンで作成可能)
- 日付を正確に記載すること(「令和○年○月○日」など特定できる形式)
- 遺言者の氏名を自署すること
- 押印すること(実印でなくても有効ですが、実印を推奨)
メリット
- 費用がほとんどかからない
- いつでもどこでも作成できる
- 遺言の内容を秘密にできる
- 証人が不要である
デメリット
- 方式不備で無効になるリスクがある
- 紛失や偽造のおそれがある
- 発見されない可能性がある
- 家庭裁判所での検認手続きが必要(法務局保管制度を利用した場合は不要)
費用の目安
作成自体は無料です。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、保管の申請手数料として3,900円がかかります。
こんな人に向いています
相続財産が比較的シンプルで、費用をかけずに遺言書を作成したい方に適しています。ただし、法的要件を正確に満たす必要があるため、作成前に専門家に相談することをおすすめします。
2. 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。法的な確実性が最も高く、専門家が作成に携わるため、実務上最も推奨される方法です。
作成の要件
- 証人2人以上の立会いが必要
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
- 公証人が遺言者の口述を筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせること
- 遺言者及び証人が署名・押印すること
- 公証人が方式に従って作成した旨を付記し、署名・押印すること
メリット
- 公証人が関与するため、方式不備で無効になるリスクが極めて低い
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない
- 家庭裁判所での検認手続きが不要
- 文字が書けなくても作成できる(公証人が代筆)
デメリット
- 公証人への手数料がかかる
- 証人2人を確保する必要がある
- 公証役場に出向く手間がある(出張作成も可能だが追加費用がかかる)
- 証人に遺言の内容を知られてしまう
費用の目安
公証人への手数料は、遺産の価額に応じて異なります。目安として、財産の総額が5,000万円以下の場合は約3万円〜5万円程度、1億円以下の場合は約5万円〜8万円程度です。別途、証人への謝礼(1人あたり5,000円〜1万円程度)がかかります。
こんな人に向いています
確実に遺言を残したい方、相続財産が多い方、相続人の間でトラブルが予想される方に最適です。多くの専門家は公正証書遺言を推奨しています。
3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう方式です。実務上はあまり利用されていません。
作成の要件
- 遺言者が遺言書に署名・押印すること
- 遺言者が遺言書を封じ、遺言書に用いた印章で封印すること
- 遺言者が公証人及び証人2人以上の前に封書を提出すること
- 公証人が日付と遺言者の申述を封紙に記載すること
メリット
- 遺言の内容を誰にも知られずに済む
- パソコンでの作成や代筆も可能
- 遺言書の存在を公的に証明できる
デメリット
- 方式不備で無効になるリスクがある
- 公証人手数料(11,000円)がかかる
- 家庭裁判所での検認が必要
- 利用実績が少なく、取扱いに慣れた専門家が少ない
こんな人に向いています
遺言の内容を絶対に秘密にしたいが、遺言書の存在は公的に証明しておきたい方に向いています。ただし、内容の不備による無効リスクがあるため、利用する際は専門家への事前相談を強く推奨します。
3つの遺言書の比較まとめ
それぞれの遺言書の主な違いをまとめると、以下のようになります。
- 作成の手軽さ:自筆証書遺言が最も手軽
- 法的確実性:公正証書遺言が最も安全
- 秘密性:秘密証書遺言が最も秘密性が高い
- 費用:自筆証書遺言が最も安い
- 検認の要否:公正証書遺言と法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要
遺言書作成時の注意点
遺留分に配慮する
遺言書を作成する際は、法定相続人の遺留分(最低限保障される相続分)を考慮しましょう。遺留分を侵害する遺言も有効ですが、遺留分権利者から遺留分侵害額請求がなされるおそれがあります。
定期的に見直す
家族構成の変化や財産の増減があった場合は、遺言書の内容を見直しましょう。古い遺言書の内容が現状と合わなくなっている場合、トラブルの原因になりかねません。
付言事項を活用する
遺言書には法的効力のない「付言事項」を記載することもできます。遺言の趣旨やご家族への感謝の気持ちを記すことで、相続人の理解を得やすくなります。
まとめ
遺言書は、ご自身の意思を確実に反映し、残されたご家族の負担を軽減するための大切な文書です。3つの種類にはそれぞれ特徴がありますが、法的確実性の面から公正証書遺言が最もおすすめです。
どの方式を選ぶべきか迷われている方や、遺言書の作成についてご相談されたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。当センターでは、お客様の状況に合わせた最適な遺言書の作成をサポートいたします。
相続手続き全体の流れについては「相続手続きの全体の流れ」の記事もご参考ください。また、よくあるご質問やサービス内容もぜひご覧ください。